QRコード決済を駆逐するか Apple新機能の破壊力

米アップルは、今秋リリースする新型iPhone向けのiOSに新機能「App Clips」を搭載すると発表した。

App Clipsは、リアルの世界とiPhoneをつなぐ仕組みだ。店舗で、QRコードや非接触ICチップであるNFCチップなどにiPhoneをかざすと、ミニアプリがダウンロードされて店舗とユーザーをつなぐようになる。

例えば、街中にあるレンタサイクルにNFCチップが貼り付けられていれば、iPhoneをかざすことでミニアプリがダウンロードされ、その場でApple Payで決済できる。さらにApple IDによって会員登録が行われ、すぐにレンタサイクルに乗れるようになる。

これまで、デパートやショップ、美容室などが会員カードを発行しても、顧客が持ってこなかったり紛失したりすることがあった。会員カードは顧客接点という面ではいかにも貧弱だ。また、顧客接点になると期待して独自のスマホ向けアプリを製作しても、アプリのダウンロードや会員登録をユーザーが面倒がってしてくれないといった課題があった。

App Clipsを利用すれば、レジ前にNFCチップを貼り付けておき、iPhoneで読み取ってもらうだけでいい。すぐにミニアプリが自動的にダウンロードされ、Apple Payで決済が実施される。Apple IDでの会員登録も可能なので、継続的に顧客接点を維持できる。ミニアプリだけでなく、通常のアプリを後でダウンロードしてもらって様々な情報やクーポンを配信することも可能だ。

スマホが登場して10年以上になるが、多くのスマホユーザーの画面には使わないアプリのアイコンがあふれている。スマホを購入した当初はせっせと新しいアプリを探してインストールするが、そのうちアプリストアを訪れなくなり、新しいアプリはめったに入れなくなる。企業がアプリを製作してもダウンロードしてもらえず、QRコードでリンク先を案内してもアクセスしてくれない。

こうした現状を背景に登場したのがApp Clipsだ。App Clipsのミニアプリのサイズは10メガバイト以下に抑えられており、ダウンロードは一瞬で完了する。ユーザーが面倒と感じる決済や会員登録の手間もほとんどない。アップルはApp Clipsの投入でアプリ市場の活性化を期待している。

■オンラインでも利用できる

App Clipsに限らず、ミニアプリを使った取り組みが広がりつつある。こうした取り組みでは、決済系アプリに顧客接点になる機能だけを搭載し、アプリを毎日起動してもらうことで別の機能を使ってもらうことを狙う。

ミニアプリはQRコード決済が普及している中国で導入が進んでいる。日本でもNTTドコモの「d払い」、KDDIの「au PAY」、ソフトバンク/ヤフーの「PayPay」などで広がりつつある。タクシーの配車や飲食店への事前オーダー、金融サービスなどでミニアプリが使われるようになっている。

QRコード決済は、経済産業省によるキャッシュレス推進で一旦は盛り上がりを見せたが、5%もしくは2%の消費者還元事業は6月末で終了する。7月以降は、いかにQRコード決済を使い続けてもらうかが重要になる。

とはいえ、QRコード決済による手数料はどのサービスもいずれは3.25%前後になる見込みだ。加盟店開拓やシステム運用などのコストとてんびんにかけると、決してもうかる事業ではない。

QRコード決済事業者にとって、決済手数料よりもうまみがありそうなのが、ミニアプリ関連の手数料だ。顧客と別のサービス提供者を結びつけ、プロモーションや金融商品の売り込み、資金の貸し付けなどを行うことで、決済手数料以上の収入が見込める可能性がある。

QRコード決済事業者は、店舗での決済を通してユーザーにアプリの起動を習慣にしてもらい、それをプラットフォームとしてミニアプリで稼ぐ構図を描いている。

一方アップルは、ユーザーにアプリを起動してもらうのではなく、街中にNFCチップやQRコードをばらまいてApp Clipsを起動させることを狙う。これによりミニアプリをiPhoneにインストールさせてスムーズに決済や会員登録を実施し、顧客と店舗をつなぐ。

App Clipsが普及すれば、リアルの店頭での決済が簡単にできるようになる可能性がある。これまで店舗がApple Payを導入するには、FeliCaに対応した決済端末が必要だった。Apple Clipsであれば、店頭にNFCチップを用意するだけでいい。顧客がiPhoneをかざせばアプリが起動する。あとは金額を入力するだけでApple Pay経由で支払いが完了する。

ひょっとすると、App Clipsの登場でQRコード決済は要らなくなるかもしれない。

アップルは「App Clipsコード」という独自のコードも開発した。QRコードと同様に紙に印刷できるので、請求書に付与することも可能だ。QRコード決済事業者はミニアプリに請求書払いの機能を付け始めているが、その座をApp Clipsが奪う可能性もある。

また、App Clipsの利用はリアルの世界に限らない。ミニアプリを起動させる情報をウェブサイトに掲示したり、そうした情報をメッセージで送信したりすることもできる。オンラインショップで見つけた商品を買おうとしたとき、そのショップがApp Clipsに対応していれば、クレジットカード情報や住所などを入力しなくても購入できる。

こうした使い勝手は、QRコード決済事業者がミニアプリで実現しようとしている世界観に近い。App Clipsには、QRコード決済事業者が抱いてきた「もうかるビジネスモデル」を根本から奪い去るインパクトがありそうだ。(日本経済新聞)

電子マネーの決済は便利で且つ非接触の為、今後も普及していくのは見えていますが日本では流派の様に乱立しすぎて使いづらくなりました。自社の囲い込み戦略のため各社多大なコストをかけましたが、少ないパイがさらに細分化され結局回収できるのでしょうか。

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