会社で働いているのは「正社員」だけではない

ギグが広がれば上司の役割も激変する

ロボットとはまったく関係ない、新たな働き方の波が到来しています。インターネットを通じて単発の仕事を受注する「ギグ・エコノミー」です。

近年、短期で仕事を請け負う「ギグ」はウーバー、タスクラビットといった企業からあらゆる業界に急速に浸透しつつあります。ある報告よると、労働力の50%以上が今後10年以内にフリーランスになるとされています。

そこまで劇的な数字になるかどうかはともかく、ギグ・エコノミーにより働き方が変わることは確かだと思います。特に、上司の役割が変わるでしょう。ギグ・エコノミーでは、正社員で構成される部門ではなく、多様で次々に入れ替わる人材プールをマネジメントする必要が出てきます。

デロイトの調査によると、より多様な雇用形態を管理する用意ができていると回答した人は16%にとどまりました。ギグ・ワーカーと正社員が混在する部門をうまく統率するため、上司はタスクマネジメント能力と人材マネジメント能力の両方をスキルアップする必要があります。

前職で管理職に就いていた10年ほど前、私は初めてギグ・エコノミー型のマネジメントにかかわりました。ある重要なプロジェクトを遂行するため、テクニカルライターを採用しました。強力な推薦もあり、彼女はすばらしい仕事をしてくれました。

ただ、意思の疎通に問題がありました。そのテクニカルライターはあまり協調性がなかったので、私の部下は彼女と一緒に仕事することを好みませんでした。上司である私は、部下が「話を聞いてもらえている」「評価されている」と思えることのほうが重要なのか、プロジェクトを成功させることのほうが重要なのか、判断を迫られました。

当時の状況では、プロジェクトを完遂することに意味がありました(彼女には、ほかの部下にない専門性がありました)。そこで私は部下に、彼らの困難な状況を理解していると伝えました。そしてプロジェクトが終わる頃には、部下も理解を示してくれました。仕事がうまく行ったことを喜んでくれ、彼女を雇った理由も理解してくれました。ただ、彼女とは2度と仕事したくないようでした。

1人の存在が職場環境に影響を及ぼす

管理職がギグ・エコノミーについてどう見たらいいのかと考えた時、この経験をよく振り返ります。そんなことはないと思うかもしれませんが、1人の人、それがギグ・ワーカーであるかどうかに関係なく、1人の人の存在が職場環境に影響を及ぼすのです。それがわずか数カ月の契約社員であっても、組織の一部とならなくてはなりません。ですから上司は、2つの重要な観点でマネジメント手法を考え直す必要があるでしょう。

先述のギグ・ワーカーとの仕事で、私が犯した最大の過ちは、「オンボーディング(職場への受け入れ)」と「オフボーディング(離職までの段取り)」に十分な時間をかけなかったことでしょう。彼女に、その時の部下とどのように意思疎通し協力してほしいかを理解してもらうことに時間をかけず、彼女が退職する前のブリーフィングも行いませんでした。

短期雇用の社員にこのようなプロセスを実施するということは直感的には理解しがたいかもしれませんが、ギグ・ワーカーも部署の会議に参加することがあり、(限られた時間ではあっても)組織の一部に組み込まれることになるのです。

ある予測によると、新規採用者が入社してから完全に生産性を発揮できるようになるまで、8カ月から1年かかるとされています。これだけの時間がかかれば、ギグ・ワーカーの多くはすでに次のプロジェクトに移行しているため、新規採用者に企業文化、プロジェクト、一緒に働く部署について理解してもらうオンボーディング、オフボーディングを実施することは、仕事を円滑に進めるうえで大きな役割を果たすのです。

そしてギグ・ワーカーとは将来また一緒に仕事をする可能性があることも念頭に置いておく必要があります。上司は、雇用中あるいは将来雇用するギグ・ワーカーとともに、有益な再雇用プロセスを設定することで、ギグ・ワーカーが再びその職場で働くことになった際に、部門や企業の重要な事項をキャッチアップし、迅速に職場に溶け込むことができるようになります。

ギグ・ワーカーと正社員はまったく異なるタイプの雇用形態であり、それぞれのマネジメントも異なります。

多くの場合、雇用形態が異なる社員にうまく対処するということは、一人ひとりに実際的な期待を設定し、それを堅持することです。私自身は部下全員を公平に管理することを心がけています。公平とは、一人ひとりが成功するために必要なものを提供することと定義しています。

ギグ・エコノミーにおけるマネジメントのもう1つ重要な要素は、作業の締め切りを全員に率直に伝えるということです。2013年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』の記事「The Dirty Little Secret of Project Management」では、「作業の期限はジョークにすぎないとみんな思っている」と書かれていましたが、ギグ・エコノミーでは期限はジョークではありません。

優れたギグ・ワーカーを惹きつけるには

ギグ・ワーカーの稼働時間は限られているので、プロジェクトの期限を厳格に設定する必要があります。今日の上司の多くは年間目標の設定には慣れていますが、ギグ・エコノミーではより明確で細かい目標を設定して、プロジェクトを枠組みの中でスケジュールどおりに進行させる責任を担っているのです。

やむをえずプロジェクト期限を延期する場合は、当初の期限以後の作業の進め方についてギグ・ワーカーや正社員とあらかじめ折り合いをつけておきましょう。そうすることでチームの全員が作業の進め方を知ることができます。

ギグ・ワーカーと働く場合、上司はその人の採用から教育・訓練、離職、再雇用のプロセスを実施し、人材マネジメントとプロジェクトマネジメントを両立させなければなりません。そうすることで、自分も部下も生産性を維持できるだけでなく、優れたギグ・ワーカーを惹きつける競争力も維持することができるのです。

最近のデロイトの報告によると、アメリカのほとんどの企業が今後数年以内に「契約社員、フリーランス、ギグ・ワーカーへの依存を大幅に拡大する」計画だとしています。ですから、ギグ・エコノミーに専門家の予測するような影響力があるかどうかにかかわらず、新たな雇用形態の社員を扱うことができるよう体制を整えることで、次に来るどんな変化にも備えることができるのです。(東洋経済オンライン)

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


Instagram Slider