「売ることを考えて買う」時代へ

中古品市場の普及に伴い、スマートフォンのフリマアプリが存在感を増している。消費者が「売ることを考えて買う」時代には、企業にも従来とは異なる商品戦略が求められる。

主に個人がインターネットを通じてモノや場所を共有(シェア)するシェアリングエコノミー(シェア経済)が、日本で急成長している。内閣府が7月に公表した試算によると、2016年の市場規模は4700億〜5250億円だった。

「モノ」のシェアが存在感増す
●「シェア経済」の内訳(2016年)
出所:内閣府の報告書「シェアリング・エコノミー等新分野の経済活動の計測に関する調査研究」より筆者作成

シェア経済市場のうち、民泊や駐車場などスペースのシェアが占めるのは1400億〜1800億円。単発で仕事を受注する、家事代行やイラスト制作などの形でサービスを提供するスキルのシェアは150億〜250億円。ネットの仲介業者を通じてスペースやスキルをシェアする働き方を米国ではギグ・エコノミー(Gig Economy)と呼び、配車サービスの「ウーバー」の運転手、便利屋サービスの提供など、新たな非正規の就労形態として急速に成長している。

これら「サービス」のシェアに対し、日本においては、フリマアプリ経由を中心とした「モノ」のシェアが3000億円と最大で、存在感が大きい。

「捨てるのはもったいない」

長い間、新品志向が強かった日本でも、リサイクルショップや古本ショップチェーンの台頭にもみられるように、中古品流通のプラットフォームが少しずつ出来上がってきた。この延長線上にあるのがシェア経済だ。長らく続いた景気低迷のなか、消費者が中古品に手を出すのは節約のためと理解されてきた。だが経済産業省の報告書に盛り込まれたアンケート調査によると、フリマアプリを使ってモノを売る理由として回答が最も多かったのは「捨てるのがもったいないから」だった。「お小遣い稼ぎのため」「手持ちのお金が欲しいから」との回答もある。だが、それ以上に目立つのは「物の有効活用をしたい」「誰かにもらってほしい」といった、節約とは直結しない意識だ。

フリマアプリは消費者同士が直接モノを売買するサービスだが、その成長のスピードは目を見張るものがある。経産省の「電子商取引に関する市場調査」によると、16年に3052億円だったフリマアプリの推定市場規模は、17年には4835億円まで伸びている。

フリマアプリが日本で初めて登場したのは12年ごろとされる。誕生からわずか5年の間に、5000億円規模の巨大市場が形成されたことになる。

個社の実績をみても、その勢いは明らかだ。18年6月に東京証券取引所マザーズへの上場を果たしたメルカリの場合、月間利用者数は1075万人。1カ月に売買される金額は300億円を超える。楽天もフリマアプリの草分け的存在だった「フリル」の運営会社を16年に買収。自社サービスの「ラクマ」と統合し、メルカリを追い上げる。

こうした状況で生まれつつあるのが、「手元にあるモノを売る」習慣が定着するなかで、「売るときのことを考えてモノを買う」「買ってもらえるうちに売る」といった新たな消費のスタイルだ。

転売意識した商品戦略を

若い世代の間では、店頭で商品を購入するとき、手元のスマホでフリマアプリを開き「いくらで売れる商品なのか」を確認する習慣が広がっているという。従来、1万円の商品を買うことは1万円の支出を意味した。だがフリマアプリの登場で、5000円で売れる見込みのある商品と分かっていれば、その商品は実質的には5000円で買えることになる。

「ブランド品」の定義もフリマアプリの浸透によって変化しそうだ。従来、日本でブランド品というと、欧米を発祥とした、長年の伝統を誇る高級品を指すことが多かった。商品に独自のロゴが施され、ステータスとして対外的に示せる「ブランド品」だ。

フリマアプリでもブランド品は取引されているが、今後は、高級品であることだけが「ブランド品」ではなくなる。例えばユニクロ。欧米発でもなければ高級路線でもなく、所有自体はステータスになり得ない。だがフリマアプリで検索するとTシャツからデニムまで、ユニクロ商品が多数出品されている。消費者が「ユニクロなら一定の品質や機能性が期待できる」と考え、中古でも購入するからだ。

すなわち、「フリマアプリで売れること」が購入基準の一つになる場合、商品の認知度や普及度、そこから生まれる信頼感も重視される。サイズや質感に対して消費者のあいだで共通認識があり、店頭で手に取らなくてもおおよそ商品の概要が分かるものが、より支持されるのだ。

「売ることを考えて買う」という消費行動は、これまでも不動産のほか、自動車など資産性の高い耐久消費財ではみられたものだ。だが、こうした商品は高額であるものがほとんど。日々の消費活動の隅々にまで「売ることを考えて買う」ことが浸透していたわけではなかった。

だが、IT(情報技術)の進化が個人にも浸透することで、個人間をつなぐ基盤が整ってきた。その結果、個人が所有するモノを有効利用する、遊休資産を有効活用する、という価値観の土壌が育ってきたことは、日本の消費社会の成熟を映しているといえる。

経産省資料によると、中古品の購入・販売意向が高いのは、女性向けファッションのほか、インテリア、書籍・映像などのコンテンツ商品が中心だ。これらの分野を手掛ける企業は、今後ますますフリマアプリの存在を考慮した戦略立案が求められるだろう。(日経BP)

 

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