社員の“副業”を会社が支援?

会社という枠組みの中で自分のやりたいことを全て成し遂げようとする必要はない。サイドプロジェクトを立ち上げながら、自身の欲求を満たしていく。そんな働き方のヒントになりそうな事例がニューヨークにある。

これからの時代の副業「Side Hustle」とは何か

ニューヨークに拠点を置き、企業のイノベーションやブランディングを支援するエージェンシー「Sylvain Labs」は、社員のサイドプロジェクトを支援し、会社として事業化している。

同社はクライアントにGoogle、Spotify、Airbnbといったテック企業から、パタゴニアやカルバン・クラインといったファッショブランドまで、名だたる企業を抱えている。

そんなSylvain Labsのウェブサイトを見ていくと、「SIDE HUSTLES」という項目に目が止まる。そこにはSylvain Labsで働く社員が手がけるサイドプロジェクトが掲載され、中には社員が個人で行っていたプロジェクトを会社で事業化したものもある。

ここ数年、本業ではないサイドプロジェクトを「Side Hustle」と呼ぶことが増えてきた。新しい副業のあり方として、欧米を中心に注目を集めている考え方だ。従来の副業とは何が異なるのだろうか。『Forbes Japan』はニュースメディア『Quartz』の記事を引用しながら次のように解説している

「お金以上に、何か価値のあるものを与えてくれる。人生に対して感じる行き詰まりや退屈さ、裏切られたような気持ちに対する防衛策だ。ミレニアル世代が副業にのめり込む本当の理由は、こうした心理的な利益なのだ・・・年齢に関わらず、読者の皆さんもこうした副業を持ちたいと考えるかもしれない」

また、書籍『Side Hustle: From Idea to Income in 27 Days』を上梓したChris Guillebeau氏はSide Hustleを次のように定義する

「サイドハッスルはパートタイムの仕事でも、ギグエコノミーでもない。それは、あなたのための資産である」

お金を稼ぐことだけを考えれば、Uberでドライバーをすることも、TaskRabbitで簡単な雑用をこなすことも、副業の範疇に含まれるかもしれない。だが、それは人生の資産になるだろうか。大きなやりがいを感じるかといえば、“雑用”にしか思えない仕事もあるだろう。

一方で、「Side Hustle」は取り組むことでお金以上の価値を自分にもたらし、資産となるものだ。

書籍の出版からヘッドホンまで。様々なSide Hustleが並ぶ

Sylvain Labsのウェブサイトにある「SIDE HUSTLES」の項目には4つのプロジェクトが並んでいる。ハイエンドのヘッドホン『Master & Dynamic』、「影響力とは何か?」をテーマにした書籍『The Dots』、アメリカの鉄道博物館「northlandz」のドキュメンタリー映像、そして「LILO」というスーパーフードのブランドまで様々だ。

同社CEOのAlain Sylvain氏が発起人となり、それに社員が参加する形で事業化したプロジェクトもある一方で、中には社員発のプロジェクトも存在している。

ある時、社員のJonny Meyer氏が料理への愛と、独自に生み出したホットソースのレシピについて同僚に熱く語ったことがあるそうだ。Sylvain Labsは会社としてJonny氏を支援し、そのホットソースレシピを「Same Same But Different」というブランドで売り出すことにした。

また、同社でプリンシパルを務めるJoey Camire氏は、2012年頃に同僚と「なぜティーンエージャーがインスタグラムに夢中になるのか」を議論していた。Sylvain Labsは会社としてリソースを提供し、ティーンエイジャーにインタビューを敢行。その結果、12分間の映像作品「Instafame」を制作したという。

同社CEOのAlain Sylvain氏は「現代は従業員が複数の関心を持っている時代」だと『FastCompany』誌のインタビューにて話す。従業員は会社で自身の全ての関心を満たそうとするのではなく、サイドプロジェクトで満たすという選択肢を持つべきというメッセージだ。

Side Hustleを支援することが会社にもたらす3つのメリット

Sylvain Labsのように会社として社員のサイドプロジェクトを支援するメリットはどこにあるのだろうか。

1つは、社員のブランド化だ。社員個人のプロジェクトを応援し、それを社外に発信すれば、その会社の社員がどのようなことに関心があり、何ができるのかを可視化できる。それが可視化されれば、クライアント企業から「この人に手がけて欲しい」という指名案件が来るかもしれない。

2つ目は、採用面での競争優位性だ。社員の副業を認めるだけではなく、それを会社として支援してくれる。そんな企業ならば入社したいと考える方も多いだろう。優秀な人材の採用につながりそうだ。

3つ目は、自社事業を伸ばすことができる点だ。広告やブランディングのエージェンシーは、クライアントワークが仕事の中心になる。だが、自社事業を育てることができれば、それは新たな収益源となる。また、自社プロジェクトがあれば、その会社は何ができるのかが可視化され、それ自体が営業ツールとして機能するだろう。

日本にも同様の事例がある。高木新平氏率いるNEWPEACEは自動運転やロボアドバイザーからメンズコスメや卓球まで幅広い仕事を手がけているクリエイティブカンパニーだ。様々なクライアントワークを手がける傍ら、2017年には2つの自社事業をリリースした。“住所不定”のファッションブランド「ONFAdd」と、UberEATS専門で販売する新感覚カップカレー「6curry」だ。

社員のサイドプロジェクトが会社と接続し、それが事業になっていく。個の活躍が重視される時代において、会社は社員のやりたい思いを事業化するプラットフォームのような存在になっていくのかもしれない。 (AMP)

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