誇張されすぎ?ギグエコノミー

「仕事の未来」ともてはやされ、急速に広がっているとされる「ギグエコノミー」(インターネットを通じて単発の仕事を受注する就労形態)。配車サービス「ウーバー」の躍進が代表例だが、この「エコノミー」で働く労働者の規模の測定は難しく、米国のエコノミストは苦慮している。

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副業?本業?ウーバードライバーなどとして働く労働者の実態把握に米エコノミストは頭を抱えている=ロイター

米ウーバーテクノロジーズ設立の2009年ごろから約10年の間に、輸送・配車、売買、便利屋・専門サービス、賃貸、オンライン単純作業などのオンラインプラットホームが次々と登場した。多くは細分化された特定の仕事(ギグ)を、働き手が自分の日程に合わせて請け負い、報酬を得るのを仲介する。「自由で自律的な新しい働き方を可能にする」と注目されてきた。

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多数の労働者がギグエコノミーで働き始めたのなら、経済指標に変化が表れるはずだが、まだ明確な兆しはみられない。企業に直接雇われていないギグ労働者は、米労働省統計では「独立契約者」に含まれる。しかし同省が18年6月に発表した非正規雇用労働者調査では、独立契約者は全就労者の6.9%で、前回12年調査の7.4%より減少。「主な仕事」について質問しているため、ギグエコノミーを副業にしている労働者は把握できないが、別の調査では「複数の仕事をしている(副業をしている)」とする労働者の割合はこの10年で大きな変化はない。

ギグエコノミーの実態を把握しようと、労働省は今回初めて同調査に「オンライン仲介の仕事」の質問を追加。しかし、警官や外科医が仕事の一部でのオンライン利用をオンライン仲介の仕事と勘違いするなど、質問を誤解した回答者が多かった。

同省は誤りとみられる回答を除くなど精査し、米全就労者の1%にあたる約160万人がオンライン仲介による仕事をしていると推定。しかし「意図通りの回答を得られなかった」と調査の限界も認め、新分野を測定する難しさが浮き彫りになった。ギグ労働者の定義さえまだ曖昧で、「今のところギグエコノミーの規模は正確につかめていない」(米シンクタンク研究者)。

JPモルガン・チェース研究所が9月に発表した報告書は、少なくともギグ労働者の増加は捕捉している。銀行口座データを分析すると、オンラインプラットホームから収入を得た人の割合は13年1~3月期の0.3%から18年1~3月期には1.6%に増加。輸送分野の急増が全体を押し上げた。

報告書は年間のいずれかの時点でオンラインプラットホームから収入を得た人の約7割は1~3カ月しかギグ労働をしておらず、輸送分野ではドライバー数が増加した半面、平均月収は13年の1469ドル(約16万円)から17年には783ドルに減ったと指摘。プラットホーム収入を得ている期間は、その収入が月収全体の54%を占めるが、金額そのものは前年月収の2割で、正規雇用の代替にはほど遠いことも示した。

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米大学でのギグエコノミー講座で有名なダイアン・マルケイ氏は16年の論文「ギグエコノミーの勝者と敗者」で、特定の技能・専門を持つ労働者は、魅力的な報酬ややりがいのある仕事を得て、自分に合った働き方を構築でき、低技能・低賃金の労働者もより良い条件の仕事を選べるようになると論じた。その通りなのか。ジャーナリストのサラ・ケスラー氏が近著「Gigged」で描いたギグ労働者の事例は示唆的だ。

ニューヨーク市在住のコンピュータープログラマーは、会社勤めを辞めてフリーランスになった結果、月1万ドル超の手取りを得、自分のスケジュールで好きなプロジェクトを選べるようにもなった。一方、ミズーリ州の元ウエーターは、ウーバードライバーとなり当初は自由な働き方に大喜びしたものの、自己負担のガソリン代、車の維持・修理代、保険料、ウーバーへの手数料を差し引くと手元に何も残らないことに気付き、待遇改善を求めて抗議すると契約を解除された。

アーカンソー州で家電量販店の顧客サービスを請け負った男性は、エアコンの故障が多い夏場は十分な収入を確保できたが、夏が過ぎると仕事が枯渇した。さらに独立契約者には最低賃金が適用されないため時給が下がり続け、結局トラック運転手に転職。カナダ・トロントでは、夫の失業で生活費を稼がなくてはならなくなった1児の母親が、1件数セントのアマゾン・ドット・コム向けの仕事を世界中の労働者と奪い合い、手首と肘にサポーターをつけながらクリックし続けた。

米アスペン研究所「未来の仕事イニシアチブ」のアラステア・フィッツぺイン事務局長は、「人々が仕事を得る方法の変化で、多様な就業形態の労働をいかに公平に扱うかが問われている。正規雇用者向けに構築されてきた恩恵や安全網からもれてしまう働き手に経済的安定を提供するため、政策の刷新が必要だ」と指摘している。(日本経済新聞)

「仕事の未来」ともてはやされ..という表現は日経らしからぬ表現ですが、、経済学者が苦慮しようがネットを単発で受発注できるワーキングスタイルは今後拡大していくと思われます。ただ受注に波があり、不当に安い賃金や支払いの不履行、労働者の権利など改善していくべき課題が多いのも確かです。また日本では人々の多くがギグエコノミーを正業とすることは考えられませんが、多くの企業で大幅な収入増が期待できない状況では副業して収入を増やすしかありません。メルカリを使って不要な品を売りに出すなど以前より手軽に副収入を稼げる方法も増えていくことでしょう。

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