ギグワーク、収入支える

南米各国でベネズエラからの難民・移民の流入が深刻化する中、ネットを通じ単発や短期の仕事を請け負う「ギグエコノミー」が雇用の受け皿として注目を集めている。かつては難民の暮らしといえば路上での物売りや物乞いが定番だったが、IT(情報技術)産業の進歩が新たな働き方を可能にした。スマートフォンを片手に、自転車や自動車で南米の主要都市を駆け回るベネズエラ人たちの現在を追った。

アルゼンチンのブエノスアイレス。宅配アプリでハンバーガーを注文すると、30分後にはベネズエラなまりのスペイン語を話すマルセロ・カマチョさん(24、仮名)が汗をかきながら自転車でやってきた。「ここでこの仕事をしている7割はベネズエラ人じゃないかな」という。

数字の信頼度はさておき、かなりのベネズエラ人がこうした宅配サービスの仕事に従事していることは事実だ。それもブエノスアイレスに限った話ではない。ペルーのリマ、コロンビアのボゴタ、チリのサンティアゴ――多くの主要都市でベネズエラ人が宅配アプリの専用リュックを背負い、買い物代行や配達をしている姿を見ることができる。

「ベネズエラ移民のような、人道危機に陥っている人々が故郷に送金できるよう手伝えることに興奮している」。コロンビア発の中南米の宅配アプリ最大手「ラッピ」の共同創業者、セバスティアン・メヒア社長はこう話す。事業者にとって、労働力となってくれる人々の存在はサービスの要。昼夜を問わず働くベネズエラ人の存在は同社が事業を展開する上で欠かせないものとなっている。

同じスペイン語圏とはいえ、労働ビザの問題もあり、エンジニアや医者など一部の職業を除き海外で正規の職に就くのは容易ではない。しかし、ギグエコノミーは仕事の割り振りから給料の振り込みまで全てスマホで完結するため、身一つで逃れてきたベネズエラ人でも容易に仕事を始めることができる。

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ベネズエラ人の流入と宅配アプリの市場の立ち上がりが同時期だったこともあり、地元住人との摩擦が比較的少ないことも職に就くうえで追い風だ。「路上で物売りをしていた頃は出て行けと言われることもあったが、宅配するようになってから感謝されることが多い」と振り返るベネズエラ人もいた。

ベネズエラ人が働くのは宅配だけではない。「最初は自転車で宅配をはじめて資金をため、市民権を得て運転免許を取ってステップアップした」。リマでウーバーの運転手として働くブレイネル・バルガスさん(25)はこう話す。母国で警察官として働いていたが、マドゥロ政権の強権的な姿勢と経済混乱に嫌気がさして出国。今は毎月600~700ドルを稼ぐという。ペルーの最低賃金の2倍程度で、故郷の家族に送金できるようになったと喜ぶ。

もっとも、前向きな人ばかりではない。ブエノスアイレスで運転手をするアドリアン・コントレラスさん(39、仮名)は「この車は自分のものではなく、手元にはほとんど残らない」と愚痴をこぼす。昼にレストランで働いた上で、夜はレストランのオーナーから自動車を借りて稼ぐが、車両代やガソリン代を考えると、最低賃金1万6875ペソ(約3万1千円)をはるかに下回る水準だという。ギグエコノミーは個人事業主として働くため、病気やけがをしたときの保障もない。

一部で問題をはらみつつも、ギグエコノミーを介したベネズエラ人の労働力化の流れは止まりそうにない。各国政府とも、不法就労で賃金相場を下げられたり、お金に困って犯罪組織に入られたりするリスクとてんびんにかけ、ベネズエラ人が個人事業主として働くことを黙認している節がある。

マドゥロ政権が独裁化を進める中、今やベネズエラ難民・移民は同国の全人口の16%にあたる460万人まで増えた。20年には650万人まで膨れあがるとの見方もあり、それにつれて周辺各国でギグエコノミーで働くベネズエラ人の姿も増えそうだ。

(サンパウロ=外山尚之)(日経新聞

ネットを通じた単発の仕事の受発注ができるので、難民・移民として国を逃れてきた人たちでもスマホ一つで収入を得られるのは有難いかもしれません。そうなるとスマホや通信費は生活の糧を得るための必要ツールになるため通信キャリアはどうあっても儲かることになります。GAFAに対抗するためかLINEとYahooが合併を発表しましたが、両者はコミュニケーションツールとキャリアを持っているので、難民が多い地域に進出すれば大化けするかも…?

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