【座談会】テレワーカーに聞く。新しいワークスタイルは、どんなオフィスを求めるのか

リモートワークをはじめとする働き方の多様化に伴い、コワーキングスペースやサテライトオフィスなど、「働く場所」の選択肢も広がりつつある。では、実際にリモートワークを行うビジネスパーソンは、そうした場所をどう活用しているのだろうか?
 企業のサテライトオフィス勤務制度を活用する会社員や、複数のコワーキングスペースを渡り歩くフリーランスなど、立場や目的の異なるリモートワーカー5名が、これからのオフィスのあり方を考える。

リモートワークは、成果主義との相性がいい── 今日は、状況に応じてリモートワークを活用し、フレキシブルな働き方を実践している方々に集まっていただきました。まずは、どのように働く場所を使い分けているか教えてください。小山 弊社では原則、いつでもどこでも自由にリモートワークをしていいことになっています。私も子供が2歳の頃から、家で子供を見ながら働くようになりました。今は小学校に通い始めたので基本的にオフィスへ出社していますが、習い事の送り迎えや外回りの時など、臨機応変にリモートワークに切り替えていますね。

杉崎 私も今は2人の子供が小学生になったので、リモートワークは子供が体調を崩した時くらいです。会社は個々の状況に応じ、リモートワークも含めて柔軟に対応してくれるので、育児が大変だった頃は在宅勤務をよく活用していました。特にPTAの本部役員をやっていた時期はフルタイムからパートタイムにしてもらうなど、その時々によってフレキシブルに勤務形態を変えています。

 PTAの役員って、相当ハードらしいですね……。杉崎 本当に……仕事と変わらないくらい忙しかった(笑)。ですから、在宅勤務ができなかったらとても回らなかったですね。 自宅なら他の人から声を掛けられることもなく集中できますし、往復2時間の通勤がなくなるのも大きい。育児しながら働こうと思ったら、全てを効率化しないと回りません。出産後は働き方も含め、時間の使い方をより意識するようになったと思います。 杉崎さんのように、タイムマネジメントも含めた自己管理ができる人は在宅勤務に適していますよね。僕はサテライトオフィスのような場所であれば業務に集中できますが、自宅となるとついスマホに手を伸ばしてしまうかも……。

── 島さんの部署では、リモートワーカーをどう管理しているのでしょうか? リクルートの場合、特に厳しく「管理」はしていません。その代わり、成果を求められます。 僕の部署では、それぞれの仕事で成果を出しさえすれば、いつ、どこで働いてもいいというスタンスです。タスクをこなすために効率化できることはないか、移動時間にできることはないかと、個々がリモートワークを含めた働き方の最適解を求めていく。そんなイメージですね。 管理されていないからこそ、責任が伴いますよね。私は複数の会社に籍を置いていますが、フルリモートで働くようになってから、より成果や効率を意識するようになりました。働いている姿が見えない分、結果だけが自分の評価になる。私にはそれが、モチベーションや程よい緊張感につながっていると思います。

 リモートワークでは必ず「社員がサボらないか不安」といった声が挙がりますが、成果主義的な要素とセットならば導入しやすいと思います。リクルートホールディングスでは2016年から日数の上限なしでリモートワークが可能になりましたが、もともと成果主義的なカルチャーがある会社なので、移行もスムーズだったんでしょうね。小山 それでいうと、私の会社はかなりしっかり管理しているほうだと思います。リモートワークの際は、開始・終了時刻の客観的記録が取れるよう打刻を徹底し、公私を明確に区別し業務を遂行させています。またMicrosoftのSkypeのプレゼンス情報を表示し、関係者と適宜コミュニケーションをはかるようにしています。

粟野 それなら管理できるだけでなく、ちょっとした会話も可能ですね。ただ、社員の方から「監視されるようで嫌」と言われませんか?小山 いえ、逆にリモートで働く社員から「自分がちゃんと働いている姿を見てほしい」と要望があったんです。彼らには、「オフィスにいないことで周りからサボっていると思われないか」という不安があった。 そこで、社内の事業部がリモートワーク専用のITツールをつくり、パソコンのログを取って上司に「ちゃんと働いていること」を報告できるシステムを導入しました。日々の仕事を確認できるだけでなく、業務分析にも役立っています。自由に働くことのメリットは?── 粟野さんと延さんはフリーランスですが、普段はどこで仕事をしていますか?粟野 現在のメインクライアントがWeWorkなどのシェアオフィスに入居していますので、週の半分はそこにあるデスクで業務を行います。残りの半分は都内にある知人のオフィスや、つくば市にある自宅から近いコワーキングスペースなどを利用していますね。 私は2つの会社にジョインしていますが、どちらもフルリモートです。その日の会社や得意先とのミーティングの場所に応じて、渋谷のコワーキングスペースやカフェなどで仕事をすることが多いですね。── 2人はなぜ、フリーランスを選択されたのでしょうか?粟野 私も元々は会社員でしたが、一つのオフィスに縛られて働くことが性に合っていなかったんです。動物園の檻に入れられているような気がして萎縮してしまうというか……(笑)。 私の場合は外で働くほうが自由にできるし、仕事も捗った。たとえば採用面接の準備でも、オフィスにいると話しかけられて気が散ってしまう。この業務は集中できれば半分の時間で終わるのにな、と思っていました。

 私は父が教師、母が看護師なんですが、ともに生徒や患者さんの応対に時間を取られる仕事のため、子供の頃は授業参観にも来てもらえず寂しい思いをしたんです。だから、社会人になる前から、自分が働く時は時間が自由になる働き方をしたいと思っていました。粟野 決まった時間、決まった場所に縛られないことは、私にとっては重要です。ただ、もちろん何をストレスと感じるかは人それぞれですから、その働き方が自分に合っているかどうかが大事だと思います。 粟野さんがお勤めされていた会社では、リモートワーク禁止だったんですか?粟野 禁止でしたね。10人ほどのメンバーで半年ほど試験的にやってみたのですが、制度としての正式導入は見送られました。 特にネックになったのは、情報の管理です。人材紹介業だったので、自宅やカフェでお客様の個人情報を取り扱うなんて、とんでもないと。── 多くの企業がリモートワークに二の足を踏む要因として、セキュリティ面への不安がありますね。その点、皆さんの会社では、どのように対応していますか?小山 外で仕事をする場合にも、必ず会社から貸与される、ハードディスクを持たないシンクライアントのパソコンを使わなければいけません。仮想デスクトップへ入る際は多要素認証が必要だったり、印刷はNGだったり、情報漏洩を防ぐためのルールは厳重に決められています。

杉崎 うちでは、秘匿情報を扱う部署ではそもそもリモートワークが禁じられています。特にお客様のお金を取り扱う業務は、絶対に社外ではできません。 致し方ないことですが、どうしてもリモートワークになじまない職種はありますよね。でも、一部の職種だけで自由な働き方が認められても社内に不公平感が生まれます。セキュリティを担保しながら、できるだけ公平な制度をつくることが今の課題になっています。 リクルートグループも、仮想デスクトップなどを使って対策しています。そうしたセキュリティ面のインフラが整ったからこそ、リモートワークを解禁するという決断に踏み切れたのだと思います。 ただし、もちろんカフェなどであけっぴろげに資料を出して仕事をすることは情報漏洩の観点でNGです。リクルートグループの場合は地方を含めると500くらいの拠点があり、加えて「ZXY(ジザイ)」のようなサテライトオフィスサービスを会社が契約しています。 杉崎さんが課題とおっしゃる秘匿性の高い業務のリモートワークについては、会社が専用のサテライトオフィスのような“セキュアな場”を提供することが一つの解決方法になる気がしますね。各々が描く、理想のサテライトオフィス── では、皆さんはどんな場があれば働きやすいと思いますか? 私自身、減量経験があり、栄養バランスの重要性を痛感したので、健康に配慮したサービスがあると嬉しいですね。会員はプロテインやサプリメントを無料で飲み放題とか、お肉や野菜の健康的な惣菜を食べられるとか。粟野 私が以前利用していた大手町のシェアスペースには、それに近いサービスがありましたね。併設のカフェで、野菜を使ったヘルシーなサンドウィッチが無料で食べられるんです。あれは確かに満足度が高かったです。

 僕は機能や設備よりも、とにかくいろんな場所に拠点がほしい。僕にとって、最大の負って「移動時間」なんです。 電車でメールをチェックすることはできても、やっぱりフリック入力のスピードには限界がありますし、移動時間は5分でも減らしたい。じゃあ職場の近くに住むかというとオフィス街が住みやすいわけではないし、家族がいたらなおさら難しいでしょう。粟野 使える拠点が増えるなら、それに越したことはないですよね。いろんな場所で働いたほうが、切り替えもしやすいです。 そう。ずっと同じオフィスで働くのって、刺激がなくなって飽きるんですよ。理想をいえば、1年ごとにオフィスを引っ越してほしいくらい(笑)。 お母さんとしてはどうですか? 子供を預けられるワーキングスペースみたいなのもありますけど、本当に使えるのかなって。

杉崎 大企業だと、シッターさんを呼んで会社で預かってくれるところもあるみたいですね。うちみたいに小さい企業だとそれは難しいのですが、そのぶん融通が利くので私も子供を会社に連れていって仕事をしたことはあります。でも、やっぱり満員電車に小さな子供を乗せられるかというと難しい。 それに、会社に行っても子供が近くにいると気になって仕事に集中できないんですよね。もちろん子供は大事なんですけど、一方で子供と離れる時間も親には必要なんです。私も正直、子供が小さかった頃は会社に来ることがむしろ休息になっていたように思います。働く場所が、会社員をフリーにする── 働く拠点が増えることで、移動から解放される。そうなると、ワークスタイルはどう変わるでしょうか。 杉崎さんのような育児と仕事の両立もそうですし、リクルートでは、障害をお持ちの方のリモートワークも多いんです。 自宅から出ること、電車に乗ることにものすごくパワーがかかってしまう方もいるけれど、そういう方にリモートワークで働いていただけるなら、お互いにとってプラスになる。企業としてダイバシティがあることは、一人ひとりの働きやすさにもつながると思います。

 そうですよね。通勤ラッシュの時間帯に一斉に会社に行くことが合理的でないことは、私たちのようなフリーランスに限らず多くの人が感じていることではないでしょうか。 人間が1日に決断できる量は決まっているって何かの本で読んだんですが、「満員電車にどう滑り込むか」とか、「どの扉がすいているか」みたいに、朝の新橋へ行くだけで不要な決断を強いられて、肉体的にも精神的にも消耗している。どうせならもっと有意義なことに使いたいですよね。 電車もそうですし、うちの会社は朝のエレベーター渋滞が半端じゃなかったんですよ。今はやや改善されましたが、少し前まではそれこそ経済メディアで特集されるくらいひどかった……。フレックスタイム制だったとしても、結局みんなコアタイムの10時に一斉に出社してくるなら意味がない。今後は、社会全体で時間の使い方に関する柔軟性をより高めていくべきでしょう。

小山 ひと昔前には、営業先の方が会社より家に近かったとしても、わざわざ帰社しないといけなかった。うちのSEは、それがなくなっただけでも、「ZXY(ジザイ)」のサテライトオフィスサービスを契約した意味があると喜んでいました(笑)。杉崎 結局、本当の意味で働き方を変えるには、いかに個々に裁量を持たせるかが大事なんでしょうね。今日は子供が早く帰ってくるから家の近くで働く、今は電車が混んでいるからしばらく時間をずらす。それがフレキシブルということだし、社会として健全なあり方だと思います。 そういうオフィスが郊外に増えていけば、都心に住む理由もなくなりますよね。ゆくゆくは会社勤めの人でも、地方都市や海外など、好きなところに住めるようになっていくんじゃないでしょうか。 あるいは、今週は福岡、来週は金沢みたいに、それこそ旅するように拠点を転々としながら仕事ができるかもしれない。そうなれば、同じ仕事、同じ会社でも人生がもっと楽しく、充実したものになっていきそうです。(編集:宇野浩志 構成:榎並紀行[やじろべえ] 撮影:後藤渉 デザイン:Seisakujo)

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