ギグエコ企業、新型コロナで株価下落幅に差

【シリコンバレー=奥平和行】新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、インターネットを通じて単発や短期の仕事を請け負う「ギグエコノミー」企業の株価の下げ幅に差がでている。人の移動を担う企業の株価は大幅に下がる一方、料理の宅配は落ち込みが小さい。ただ、消費者行動や前提とする事業環境が変わることで、業界全体が逆風を受ける恐れがある。

株式を上場している米国の3社の株価推移をみると、収益に占める料理の宅配の比率が高い企業ほど、株価の下落率が小さいことが分かった。

1月末に世界保健機関(WHO)が非常事態宣言を出した直後から3月16日までの下落率は、ライドシェア専業のリフトが60%に迫る一方、料理だけのグラブハブは約3割にとどまった。ライドシェアと料理宅配の両方を手がけ売上高の2割近くを「ウーバーイーツ」が占めるウーバーテクノロジーズは44%だった。

ウーバーのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は19日、「極端なシナリオ」と断ったうえで、今年のライドシェアの乗車数が最大8割減る可能性を示した。ライドシェアは各地の外出規制などが大きな逆風となっている。

一方、料理宅配は外出が原則禁止になったサンフランシスコでも例外として営業が認められるなど、影響は相対的に小さい。それでも食材の配達に比べれば低調との指摘がある。

米調査会社のアップトピアによると、食材を手がけるインスタカートなどのスマートフォンのアプリは3月半ばまでの1カ月間にダウンロード数が大幅に増えたが、料理宅配は減少した。アップトピアのバイスプレジデント、アダム・ブラッカー氏は「消費者は料理宅配は高価なうえ、自炊ほど安全ではないと気づき始めた」と指摘する。

運転や配達を担うギグワーカーは独立事業主で、消費者が衛生管理を懸念しているとの指摘もある。ウーバーはライドシェアのドライバーに消毒剤の配布を始め、料理や食材を扱う一部の企業は消費者が配達員と顔を合わせずに商品を受けとれる「コンタクトレス」と呼ぶサービスを始めた。ただ、業界全体として消費者の信頼を得られるか不透明だ。

社会保険や休業補償といった社会的なセーフティーネット(安全網)が不備であることも懸念材料になっている。料理宅配のポストメイツはギグワーカーが新型コロナに感染して通院や治療が必要になった場合、新設する基金から費用を補填すると表明した。ウーバーなども感染して働けなくなった場合、2週間にわたって財政的に支援することを決めた。

ただ、こうした対応に対しては「不十分だ」(ギグワーカーで構成するギグワーカーズ・ライジング幹部でドライバーのスティーブ・グレッグ氏)といった声もある。カリフォルニア州では今年1月、ギグワーカーを社会保障が充実した正社員にすることを促す法律が施行された。グレッグ氏は正社員にする動きの加速を求め、同州知事などに書簡を送った。

ウーバーなどギグエコノミー分野の企業は、ギグワーカーの活用が容易なことを前提に成長してきた経緯がある。ただ、社会保障費の負担が重く増減員が難しい正社員化などを迫られることにより、成長やコストの見通しは変わる。2月下旬に新規株式公開(IPO)を申請したドアダッシュなど後続企業の戦略にも影響を与えかねない情勢だ。(日本経済新聞

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